出生数と婚姻数の関係をデータで検証|何年遅れて効いてくるのか

婚姻件数が減れば出生数も減る、とよく言われる。2000年から2023年に限れば、全国の婚姻件数は-40.5%、出生数は-38.9%と、ほぼ同じ割合で変化した(負の値は減少)。しかし「何年遅れで効くか」を年次データで測ると、遅れは1点に定まらない。以下は人口動態統計(厚生労働省、確定数)による自前集計である。

婚姻数と出生数、それぞれの推移

使うのは人口動態統計の確定数で、全国と都道府県の出生数・婚姻件数は社会・人口統計体系 都道府県データ(e-Stat 統計表 0000010101)から、全国の第1子の出生数は人口動態統計 上巻(0003411603)から取った。

全国の出生数は1980年に1,576,889人、2000年に1,190,547人、2023年に727,288人だった。婚姻件数は同じ年に774,702組、798,138組、474,741組である。第1子に限ると2000年の583,220人から2023年の338,908人へ、変化率は-41.9%だった。

全国の出生数と婚姻件数の推移を2000年=100の指数で示した折れ線(1980〜2023年、人口動態統計 確定数)

1980年と2000年を比べると、出生数は減ったが婚姻件数はほとんど変わっていない。

出生数を同じ年の婚姻件数で割った「婚姻1組あたりの出生数」の目安は、1980年の2.04から2000年の1.49へ下がった。2000年以降は最小1.44(2019年)から最大1.62(2021年)の幅に収まり、2023年は1.53である。分子には前年以前の婚姻による出生も嫡出でない子も入るため、1組が持つ子の数ではなく粗い目安である。比がこの幅に収まるのは、2000年以降に2つの系列がほぼ同じ割合で減ったことの言い換えにあたる。

ラグ相関を計算する — 何年遅れが最も効くか

計算方法

婚姻件数の t 年と出生数の t+k 年を組にし、k(ラグ)を0〜3年で変えて相関係数を求める。t は第1子の系列が毎年そろう2001年から2023年で、t+k が2023年を超える組は使わない。対はラグ0年で23年分、ラグ3年で20年分になる。

相関は件数そのもの(水準)どうしと、前年比どうしの2通りで計算した。前年比は「今年÷前年」の対数で表す。

判定には5%有意の目安を使う。対の数から決まる値で、2つの系列に関係が無くても偶然これを超える相関が出るのは20回に1回程度、という境目である(各年の値を互いに独立とみなした場合)。対が少ないほど目安は大きく、ラグ0年で0.41、ラグ3年で0.44である。

全国と都道府県でラグは違うか

全国の水準どうしの相関は、ラグ0年0.98、1年0.98、2年0.97、3年0.95と、どのラグでも1に近い。婚姻と出生の結び付きの強さとしてよく示される値だが、2つの系列が同じ時期に減り続ければ、関係がなくても水準の相関は1に近づく。共通の減少傾向による見かけの相関で、遅れの判定には使えない。

前年比どうしにすると様子が変わる。出生数の総数ではラグ0年0.23、1年0.24、2年0.32、3年0.37で、最も高いラグ3年を含め、どれも目安(0.41〜0.44)に届かない。

婚姻件数(t年)と出生数(t+k年)の相関係数をラグ0〜3年で比べた折れ線。系列は水準(出生数)・前年比(出生数)・前年比(第1子)と5%有意の目安、婚姻は2001〜2023年

第1子に限ると、ラグ1年だけが0.45と目安0.42をわずかに超える。ラグ0・2・3年は0.13・0.17・0.32にとどまる。ただし対は22年分しかなく、4つのラグを試せば1つが偶然目安を超えることも珍しくない。この超過は2020年の婚姻の大きな減少1年分に大きく依存しており、婚姻の年から2020年を除くと0.36で目安0.43を下回る。ラグ1年と他のラグの差が偶然でないとまでは言えない。

都道府県ごとに出生数の総数で同じ前年比の相関を求め、最も高くなるラグを数えると、0年が7都道府県、1年が8都道府県、2年が16都道府県、3年が16都道府県だった。有意かどうかは問うていない。2〜3年が多いが、どの県も全国共通の2020年の変動を含み、2020年を除くと0年16都道府県、1年15都道府県、2年10都道府県、3年6都道府県へ入れ替わる。共通する1つのラグは見えない。

一方、2013年から2023年の変化率を47都道府県で比べると、婚姻件数と出生数の相関は0.87と高い。出生数の減少率が最も大きい秋田県は出生数-41.5%・婚姻件数-40.4%、最も小さい東京都は出生数-21.5%・婚姻件数-18.5%だった。ただし10年の窓では数年の遅れを区別できず、ラグの証拠ではない。若い世代の人口の増減が両方を動かすこともあり得るため、因果の証拠でもない。

相関から言えること・言えないこと

言えるのは、2000年以降、婚姻件数と出生数がそろって減ってきたことである。言えないのは「婚姻の k 年後に出生が動く」という1点のラグである。理由の候補は結婚から第1子までの期間の散らばりである。人口動態統計 上巻(0003411611)で2024年に生まれた第1子(嫡出子)を見ると、父母が結婚生活に入ってから(同居開始と挙式の早いほう)誕生までの平均は2.84年で、2000年の1.89年から延びた。1年未満に生まれたのは19.8%、3年未満までで62.6%、5年未満までで85.8%である。起点は婚姻届の時点とずれることがある。

2024年に生まれた第1子(嫡出子)の、父母の同居開始から誕生までの期間の分布(1年未満から4〜5年未満までの1年刻みと5年以上、%)

ある年の婚姻の増減は数年に分かれて出生に表れ、効き方が散らばるほど1点のラグで測る相関は薄まると考えられる。

近年の全国の前年比(増減率、負の値は減少)を並べる。

年婚姻件数出生数第1子
2018-3.4%-2.9%-2.9%
20192.1%-5.8%-6.0%
2020-12.3%-2.8%-2.1%
2021-4.6%-3.5%-5.1%
20220.8%-5.0%-4.5%
2023-6.0%-5.6%-4.7%

2019年に婚姻件数が増えた翌年、第1子の減少は前後の年より小さかった。2020年に婚姻件数が大きく減った翌年、第1子は再び大きく減った。ラグ1年の相関と矛盾しないが、翌年の第1子の減り方は婚姻より小さく、残りは2年目以降に散らばると考えられる。2022年の婚姻増のあとの2023年には同じ動きは見えない。2019年は改元、2020年は感染症流行の年と重なるが、統計は理由を持たず、時期の一致から因果は言えない。

よくある質問

婚外子比率の影響は。 本稿では婚外子の割合を集計していない。出生数の総数も第1子の系列も嫡出でない子を含み、結婚期間の分布だけが嫡出子を対象にしている。婚姻と直接結び付かない出生を含む数字が混ざっている点に注意してほしい。

有配偶出生率との違いは。 有配偶出生率は、15〜49歳の結婚している女性の人数あたりの嫡出出生数で、出生の起きやすさを測る指標である。本稿はその年に新たに届け出られた婚姻の件数と出生数の件数を並べただけで、結婚している人の総数も年齢構成も扱っていない。

まとめ

婚姻件数と出生数は、2000年から2023年にほぼ同じ割合で減った。ただし水準の相関は共通の減少傾向で1に近づき、遅れの判定には使えない。前年比では総数はどのラグも目安に届かず、第1子のラグ1年も2020年の1年に依存する。第1子までの期間が数年に散らばるため、遅れは1点に定まりにくいと考えられる。

出生と死亡の差である自然増減の都道府県順位は自然増減率ランキングで確認できる。ツールの紹介は人口カルテ47にある。

参照: 出典は厚生労働省の人口動態統計(確定数)。全国・都道府県の出生数と婚姻件数(1980〜2023年)は社会・人口統計体系 都道府県データ(e-Stat 統計表 0000010101)、全国の第1子の出生数(2000〜2023年)は人口動態統計 上巻 出生順位別出生数(0003411603)、第1子出生までの父母の結婚期間(嫡出子、2000年・2024年)は人口動態統計 上巻(0003411611)。全国の出生数は都道府県の合計と一致しない(住所が外国の分を含む)。相関係数・前年比・婚姻1組あたりの出生数は本稿の集計で、相関は因果を示さない。集計・確認日 2026-10-04。照合に用いた公表資料は厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei23/index.html 、結婚期間の定義は同「令和3年度 出生に関する統計の概況」の用語の解説 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/dl/yougo.pdf (いずれも確認日 2026-10-05)。