政令指定都市の人口増減を比較|中核市との吸引力の差はどこに
政令指定都市(政令市)の人口は、2020→2025年の国勢調査で合計-0.5%、中核市は-2.8%だった(全国は-2.5%)。転入と転出に絞ると、転入超過の絶対数では政令市が上位を占めるが、人口千人あたりの率では政令市全体を上回る中核市が9市ある。差は都市の区分と三大都市圏の内外の両方に沿って分かれていた(原因は測っていない)。以下は公表値による自前集計である。
政令市・中核市の人口増減の現状
2020→2025年に人口が減ったのは政令市20市のうち14市、中核市62市のうち57市である。
ただし人口の増減には出生と死亡の差(自然増減)も含まれる。人口が減った市のうち、政令市の5市と中核市の18市は、移動報告の転入超過(暦年2020〜2025年の合計)が正だった。国勢調査の5年とは期間がずれるが、自然減や国外との出入りなどがそれを上回ったと考えられる。本稿は自然増減と社会増減を分けておらず、以下は転入と転出の差(社会増減)だけを比べる。
住民基本台帳人口移動報告で2020〜2025年(暦年、6年)の転入超過数を合計すると、政令市は334,357人、中核市は-73,944人だった(負は転出超過)。両区分の82市のうち、転入超過数の上位10の9市が政令市で、上位5は大阪市(72,695人)、横浜市(62,830人)、札幌市(59,715人)、さいたま市(53,356人)、福岡市(46,691人)である。
人口比(転入超過率)でそろえると順位はどう変わるか
転入超過率の求め方
- 転入超過率は、2020〜2025年の転入超過数の合計を年数で割り、2020年国勢調査の人口で割って1000を掛けた値である。単位は‰(パーミル、人口千人あたり)の年平均。区分の率は合計どうしで割る(人口の多い市ほど重く効く)
- 移動報告の市区町村の転入・転出は、国内の他の市区町村との移動(日本人と外国人の計)で、国外との出入りは含まない。政令市は市全体の値で、区どうしの移動は含まない
- 政令市は20市、中核市は総務省「中核市一覧」(令和5年4月1日現在)の62市。区分は期間全体で令和5年4月1日現在の指定を使った(2026年10月12日時点の政令でも同じ)。水戸市・吹田市(2020年4月)と松本市・一宮市(2021年4月)は期間の途中で中核市になった。施行時特例市は「その他の市」に含む
- 東京23区、その他の市(710市)、町村(925町村)も集計した。2020年国勢調査で常住者がいなかった双葉町は除いた
順位の入れ替わり
区分全体の率は政令市2.00‰、中核市-0.54‰で、政令市が高い。しかし率の上位10のうち5市が中核市で、政令市全体の率を上回る中核市は9市あり、うち8市は三大都市圏の市である。中核市の柏市と吹田市は率では上位に入るが、転入超過数の順位は11位・14位である。逆に横浜市は数が62,830人と多いが、率では15位にとどまる。
市ごとの率の中央値は政令市0.91‰、中核市-0.97‰で、6年の合計で転入超過だったのは政令市20市のうち11市、中核市62市のうち23市だった。人口と率の順位相関は0.44で、大きい都市ほど率が高い傾向は弱い〜中程度にとどまる。
区分別の推移
政令市は毎年転入超過(2025年2.26‰)、中核市は毎年小さな転出超過(同-0.47‰)だった。東京23区は2021年に-1.52‰と転出超過になり、2024年は6.04‰まで上がった。2021年は新型コロナウイルス感染症の流行が続いた時期にあたり、一時的な転出超過はその時期の移動の変化と考えられるが、原因は測っていない。町村は毎年転出超過で、期間の平均は-2.83‰だった。
吸引力の差はどこから来るか
三大都市圏の内と外
三大都市圏は移動報告の区分に合わせ、東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)・名古屋圏(岐阜・愛知・三重)・大阪圏(京都・大阪・兵庫・奈良)の市とした。政令市は圏内・圏外とも10市ずつである。
圏内では政令市2.52‰・中核市1.04‰、圏外では1.17‰・-1.77‰で、どちらでも政令市が上回る。ただし圏外の政令市は札幌市・福岡市が率を押し上げており、10市のうち転入超過は4市で、2市を除くと-0.77‰だった(それでも圏外の中核市より高い)。一方、中核市は圏内の24市のうち17市が転入超過だったが、圏外では38市のうち6市にとどまる。その他の市も圏内0.73‰・圏外-2.16‰で、率は区分と都市圏の両方に沿って分かれている。
率の下位5は呉市・佐世保市・長崎市・豊橋市・那覇市で、いずれも中核市だった(豊橋市を除き三大都市圏の外)。転出超過だった政令市は9市(率の低い順に岡山市・北九州市・広島市・静岡市・神戸市・京都市・浜松市・堺市・新潟市)である。
仮説: 雇用・大学・地価
本稿は三大都市圏の内外しか測っておらず、雇用・大学・地価は測っていない。以下は検証できる形の仮説である。
- 雇用: 本社や支店、行政機関が集まる政令市は、就職や転勤に伴う転入を受けやすいと考えられる。市ごとの従業者数と並べれば確かめられる
- 大学: 大学の多い都市は進学で転入を受け、就職期に転出が出る可能性がある。市の単位では年齢別の移動で確かめられる。都道府県単位では18歳の移動の記事で集計した
- 地価: 柏市や船橋市など大都市近郊の中核市は、通勤圏で住宅を得やすく、大都市からの転入を受けている可能性がある
東京圏への集中は東京一極集中の記事で集計した。
よくある質問
政令市と中核市の要件の違いは。 地方自治法では、政令市(指定都市)は「政令で指定する人口五十万以上の市」(第252条の19)、中核市は「政令で指定する人口二十万以上の市」(第252条の22)である。中核市は、指定都市が処理できる事務の一部を担う(総務省「中核市制度について」)。
まとめ
転入超過の絶対数では政令市が上位を占め、区分全体の率も政令市2.00‰が中核市-0.54‰を上回った。ただし人口比でそろえると、政令市全体を上回る中核市が9市ある。三大都市圏の内外どちらでも政令市が上回る一方、中核市は都市圏の内外で大きく分かれた。
都道府県単位の社会増減率は人口カルテ47の社会増減率のランキングで見られる。ツールの紹介は人口カルテ47にある。
参照: 転入超過は総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(年報、e-Stat 統計表 0003419945、2020〜2025年、移動者は日本人と外国人の計)による。人口は総務省統計局の国勢調査で、令和2年(e-Stat 統計表 0004019309)と令和7年(e-Stat 統計表 0004066183)の不詳補完値、各年10月1日現在。中核市の区分は総務省「中核市一覧」(令和5年4月1日現在) https://www.soumu.go.jp/main_content/000885088.pdf (掲載ページ https://www.soumu.go.jp/cyukaku/ )、中核市の事務は総務省「中核市制度について」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000885092.pdf 、要件は地方自治法(e-Gov 法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067 による。確認日はいずれも 2026-10-12。転入超過率・順位・中央値・順位相関・件数・増減率は本稿の集計。集計・確認日 2026-10-12。本稿の数値と図は、上記の統計(政府統計の総合窓口 e-Stat で公開)と総務省の資料を基に doand.tech が加工して作成したもので、国が作成したものではない。