消滅可能性都市のその後|2014年の予測を2025年国勢調査で検証した

2014年に「消滅可能性都市」とされた896市区町村の20〜39歳女性を、2025年の国勢調査まで追跡した。全国の20〜39歳女性は2010→2025年の変化率が-20.4%で、人口移動が収束しない場合の予測を15年分に換算した-20.3%とほぼ同じだった。どの自治体が速く減るかの並びもおおむね当たり、大きく外れたのは少人数の町村と一部の都心の区である。以下は公表値による自前集計である。

2014年の「消滅可能性都市」とは何だったか

元になったのは、日本創成会議・人口減少問題検討分科会が2014年に公表した「ストップ少子化・地方元気戦略」の別添で、内閣府「選択する未来」委員会の地域の未来ワーキング・グループ(2014-07-29)に「資料5(別添2) 全国市区町村別『20~39歳女性』の将来推計人口」として配布された推計である(以下、リスト)。

リストは2010年の20〜39歳女性と、2040年の推計2通り(国立社会保障・人口問題研究所=社人研の推計と、人口移動が収束しない場合の推計)を載せる。後者で2010→2040年に5割以上減る(変化率-50%以下)市区町村が「消滅可能性都市」で、896市区町村あった(2040年の人口1万人以上が373市区町村、1万人未満が523市区町村)。

2025年までの実測で予測を追跡した

追跡集計の方法

  • 基準の2010年はリストの値(社人研の基準人口で、年齢不詳を按分)、2015・2020・2025年は総務省統計局の国勢調査の不詳補完値(年齢不詳を補完)。どちらも不詳を割り振った値どうしで比べる
  • リストに途中の年の値が無いので、15年時点の予測は30年を一定の率で減ると仮定して換算した(-50%は15年で-29.3%)。直線で按分した場合(-25%)も確かめ、仮定に頼らない比べ方として30年の予測変化率と15年の実測変化率の順位相関も使う
  • 福島県はリストに県単位の1行しか無く市町村別の推計がないので、59市町村を除いた。比べたのは1,799市区町村(消滅可能性都市896市区町村、それ以外903市区町村)
  • 政令市はリストに合わせ、区ごとの推計がある12市は区、市単位の8市(さいたま・相模原・新潟・静岡・浜松・堺・岡山・熊本)は市で比べた。2014年に栃木市へ編入された岩舟町は、2025年の国勢調査の旧町の区域の値で分けた

全国と合計は予測どおりの水準に

全国の20〜39歳女性は15,842,128人から12,617,250人へ減り(-20.4%)、予測(人口移動が収束しない場合)の15年換算-20.3%とほぼ一致した。合計(栃木市・岩舟町を除く)でも、消滅可能性都市は実測-36.5%・予測換算-35.0%、それ以外は-17.3%・-17.8%だった。

消滅可能性都市とそれ以外の20〜39歳女性の合計の、2010年からの変化率(実測と、予測を一定率にした線)。どちらも2010→2015年は予測の線より速く減り、その後は減り方が緩んだ

ただし途中の経路は違う。全国の5年ごとの変化は-11.6%・-6.0%・-4.2%と前半に偏り、一定率なら毎回-7.3%になる。2010年に20〜39歳だった人数の多い世代(1971〜74年生まれ)が、2015年には40代に入って抜けたためと考えられる。

一方、自治体ごとの中央値では、消滅可能性都市が実測-43.5%・予測換算-37.8%、それ以外も-24.8%・-20.8%と、どちらも予測より速く減った。合計との違いは規模から来る。2010年の20〜39歳女性が1万人以上の442単位は合計で実測-16.5%・予測換算-18.7%と予測より緩やかで、1万人未満の1,357単位は-32.4%・-26.9%と速かった。中央値は単位の数で、合計は人数で数えるので、前者には小さな単位が強く効く。1万人未満どうしでは、自分の予測換算より速く減った割合は消滅可能性都市71.8%、それ以外78.4%で、消滅可能性都市が特に速く減ったとは言えない。

自治体の並びと2つの推計

消滅可能性都市(896市区町村)とそれ以外(903市区町村)の、20〜39歳女性の予測変化率(2010→2040年)と実測変化率(2010→2025年)の散布図。予測を一定率で15年分に換算した線と、-50%の基準線を破線で表示

並びはおおむね当たった。予測と実測の順位相関は0.74で、消滅可能性都市の805市区町村(89.8%)が15年時点の目安-29.3%以下まで減った。それ以外でも307市区町村(34.0%)がこれを下回る。直線按分の目安(-25%)では837市区町村と445市区町村である。

2つの推計では、人口移動が収束しない場合のほうが社人研推計より実測に近い。順位相関は0.74と0.60で、補助として見た実測と15年換算の差の絶対値の平均も9.8ポイントと14.2ポイントだった(後者には予測全体の水準のずれも含まれる)。東京圏への転入超過が続いたこと(東京一極集中の記事)と整合的だが、本稿は移動を測っておらず因果は示さない。

予測と実測が乖離した自治体

実測のばらつきは少人数の単位ほど大きい。2010年の20〜39歳女性が1,000人未満の493市区町村では実測変化率の標準偏差が18.3ポイント、1,000人以上では15.7ポイントだった。1,000人以上に絞って、予測から外れた例を挙げる。

消滅可能性都市のうち実測の変化率が高い3単位:

自治体予測の変化率(30年: 2010→2040)実測の変化率(15年: 2010→2025)人数 2010→2025
大阪府大阪市浪速区-50.0%83.1%12,236人→22,410人
大阪府大阪市中央区-53.6%46.1%16,567人→24,201人
東京都豊島区-50.8%4.2%50,136人→52,260人

それ以外のうち実測の変化率が低い3単位:

自治体予測の変化率(30年: 2010→2040)実測の変化率(15年: 2010→2025)人数 2010→2025
富山県入善町-38.5%-51.3%2,745人→1,338人
兵庫県猪名川町-37.4%-50.7%3,697人→1,821人
山口県田布施町-43.9%-47.4%1,623人→854人

予測は人口移動が収束しない場合、人数は20〜39歳女性。

消滅可能性都市のうち20〜39歳女性が増えたのは9市区町村で、区が4つ(東京都豊島区・大阪府大阪市浪速区・大阪府大阪市西成区・大阪府大阪市中央区)、残りの5つは新潟県粟島浦村・山梨県丹波山村・島根県海士町・島根県知夫村・鹿児島県十島村である。後者は2010年に最大でも145人の小さな島・村で、わずかな人数の出入りで率が大きく動く。

乖離を生んだ要因の仮説

本稿のデータは増減の理由を持たないので、以下は仮説である。

  • 都心の区: 住宅の供給と若い単身者の転入が重なったと考えられる
  • 小さな島: 移住を受け入れる施策が、少ない母数のもとで率を大きく動かした可能性がある
  • 外国人住民: 国勢調査の人口には外国人も含まれ、その増加が押し上げた自治体もありうる。ただし本稿のデータは国籍の内訳を持たず、外国人の寄与は測っていない(外国人と地方労働力の記事)

小さな町村の高齢化は高齢化率上位自治体の記事で集計した。

よくある質問

2024年版リストとの違いは。 2024年に人口戦略会議が新しいデータで同様の分析を公表した。本稿は2014年の予測そのものの答え合わせである。

「消滅」とは自治体が無くなることか。 そうではない。20〜39歳女性が30年で半分以下に減るという推計上の区切りである。

自分の自治体の値はどこで見られるか。 本稿は市区町村別の一覧を載せていない。2014年の予測は参照欄の内閣府の会議資料(日本創成会議の推計)にある。都道府県単位の動きは人口カルテ47の人口減少のトピックや社会増減率のランキングで見られる。

まとめ

2014年の予測は、全国と合計の2025年の水準、自治体の並びの両方でおおむね当たった。減り方は前半に偏った。小さな単位は区分を問わず予測より速く減り、人数の多い都市は合計で緩やかに減った。大きく外れたのは少人数の町村と一部の都心の区で、要因は仮説の段階にとどまる。ツールの紹介は人口カルテ47にある。

参照: 2014年の予測は日本創成会議・人口減少問題検討分科会の推計で、内閣府「選択する未来」委員会 地域の未来ワーキング・グループ(2014-07-29)の「資料5(別添2) 全国市区町村別『20~39歳女性』の将来推計人口」 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/wg3/0729/shiryou_05-2.pdf (議事ページ https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/wg3/0729/agenda.html 、確認日 2026-10-10)による。基準の2010年はリストの値(社人研の基準人口、年齢不詳を按分)。実測は総務省統計局の国勢調査の20〜39歳女性で、2025年(人口等基本集計、e-Stat 統計表 0004066183、2026-09-29 公表の確定値)・2020年(e-Stat 統計表 0004019309)・2015年(e-Stat 統計表 0004019348)の不詳補完値、各年10月1日現在。比べた単位はリストの区分による(福島県を除く)。変化率・15年換算・順位相関・差の絶対値の平均・標準偏差・件数・中央値は本稿の集計。集計・確認日 2026-10-10。本稿の数値と図は、上記の統計(政府統計の総合窓口 e-Stat で公開)と内閣府の会議資料(日本創成会議の推計)を基に doand.tech が加工して作成したもので、国が作成したものではない。