将来推計人口の前提を分解する|2050年予測の作り方と振れ幅

将来推計人口は予言ではなく、仮定を置いたときの計算結果で、仮定の置き方で大きく振れる。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の令和5年推計(2023年4月公表)では、出生中位・死亡中位の仮定の下で2070年の総人口は8,700万人と推計されているが、9通りの組み合わせでは最大9,744万人、最小7,833万人と1,911万人の幅がある。以下は公表値による自前集計である。

将来推計人口はどう作られているか

コーホート要因法の骨子

社人研の全国推計はコーホート要因法で作られている。出発点は2020年国勢調査の男女・年齢別の人口(総人口12,615万人)。ここから1年ずつ、各年齢の人を1歳進め、死亡で減る分を引き、国外との出入りを足し引きし、生まれた子を0歳に加える。これを推計期間(2021〜2070年)の終わりまで繰り返す。

将来の出生・死亡・移動は分からないので、その部分は仮定として置く。推計の結果は、仮定をすべて受け入れた場合の計算である。

3つの仮定

  • 出生: 合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子の数に相当)。2020年は1.33で、2070年の仮定は中位1.36、高位1.64、低位1.13
  • 死亡: 平均寿命。2020年は男81.58年・女87.72年で、死亡中位の仮定では2070年に男85.89年・女91.94年まで延びる。死亡にも中位・高位・低位があり、死亡低位は寿命が長くなる側
  • 国際人口移動: 日本人は入国超過率、外国人は入国超過数で置く。基本推計の外国人の入国超過数は2040年の仮定値で年163,791人

出生3仮定×死亡3仮定の9通りが基本推計である。本稿で「中位」と書くのは出生中位・死亡中位の推計を指す。中位では総人口は2050年に10,469万人となり、2056年に1億人を割ると推計されている。

仮定の組み合わせで結果はどれだけ変わるか

令和5年推計の総人口の推移(2020〜2070年、5年ごと)。9通りのうち最大(出生高位・死亡低位)、出生高位・出生中位・出生低位(いずれも死亡中位)、最小(出生低位・死亡高位)の5本。2070年は最大9,744万人、中位8,700万人、最小7,833万人。縦軸は6,000万人から

線は2020年の同じ点から出発し、年を追うごとに開く。2050年の幅は1,080万人(最大11,038万人、最小9,958万人)、2070年は1,911万人になる。1億人を割る年は、死亡中位のまま出生高位なら2064年、出生低位なら2052年と推計されている。

振れ幅は何で生まれるか

2070年の差を仮定ごとに比べると、出生の仮定(高位−低位、死亡中位)で1,525万人、死亡の仮定(低位−高位、出生中位)で385万人になる。この2つを足すと9通りの幅にほぼ等しい。9通りの外にある外国人の移動も、基本推計の中位(8,700万人)と、2040年の外国人の入国超過数を0人とした条件付推計(7,715万人、他の仮定は基本推計と同じ)を比べると985万人の差になる。3つの中では出生の仮定が最も大きい。ただし出生と死亡は社人研が置いた高位と低位の差、外国人は基本推計の仮定と0人の差で、置き方が違うので厳密に同じ物差しではない。

2070年の総人口の差を仮定ごとに比べた横棒。9通りの最大−最小1,911万人、出生の仮定(高位−低位)1,525万人、死亡の仮定(低位−高位)385万人と、別の比較として9通りの外にある外国人の移動(基本推計と入国超過0人の条件付推計の差)985万人。出生・死亡の差は他方を中位にした比較

条件付推計には、2040年の外国人の入国超過数を25万人・50万人とした場合もあり、2070年の総人口はそれぞれ9,287万人、10,988万人(0人なら7,715万人)と推計されている。これらの差は条件の置き方で決まるので、上の比較には入れていない。外国人人口の実際の動きは外国人人口の都道府県別推移の記事で集計した。

過去の推計はどれだけ当たってきたか

総人口

各版の出生中位・死亡中位の総人口を、国勢調査の総人口(各年10月1日現在)と比べた。

推計の版2020年2025年
平成24年1月推計(2012年1月)12,410万人12,066万人
平成29年推計(2017年4月)12,533万人12,254万人
令和5年推計(2023年4月)(出発点)12,326万人
国勢調査の実績12,615万人12,297万人

平成24年1月推計に比べ、実績は2020年に205万人、2025年に231万人多かった。平成29年推計に比べても82万人、43万人多かった。令和5年推計の2025年は、実績が推計を下回り(差は-29万人)、過去2版とは逆になった。実績は同じ版の出生低位(死亡中位)の12,285万人と中位の間にある。次節の出生数の下振れは人口を下げる向きに働くが、外れ方の要因の分解はしていない。

出生数

日本人の出生数の推計(令和5年推計の日本人参考推計、出生中位)と人口動態統計の実績の折れ線(2021〜2024年)。2024年は推計755,263人に対し実績686,173人。縦軸は60万人から

令和5年推計の日本人参考推計(出生中位)の出生数と、人口動態統計の日本人の出生数を比べた。実績÷推計−1は2021年-0.2%、2022年+0.7%、2023年-1.6%、2024年-9.1%だった。2021・2022年は推計の公表より前の年にあたる。2024年は、推計が前年の739,083人から755,263人へ増える形だったのに対し、実績は727,288人から686,173人へ減った。

合計特殊出生率の仮定は、2024年で中位1.27、低位1.12だった。日本人の出生数の推計は出生中位だけが公表されているので、高位・低位とは比べていない。出生数と婚姻数の関係は出生数と婚姻数の記事で集計した。

よくある質問

都道府県別の推計との関係は。 社人研は全国推計を基に、都道府県・市区町村別の「地域別将来推計人口」も公表している。本稿は全国推計だけを扱った。2014年に市区町村別の推計から作られた予測を実績と照合した例は消滅可能性都市のその後の記事にある。

移動の仮定とは。 国外との人の出入り(国際人口移動)の仮定で、日本人は入国超過率、外国人は入国超過数で置く。基本推計の外国人の入国超過数は2040年に年163,791人である。国内の移動は全国の総人口を増減させないので、全国推計の仮定には入らない。

まとめ

将来推計人口は仮定を置いたときの計算結果で、令和5年推計の2070年の総人口は、出生と死亡の仮定の組み合わせだけで1,911万人の幅がある。幅を生むのは主に出生の仮定で、外国人の移動の仮定も大きく効く。過去2版では総人口の実績が推計を上回り、令和5年推計の2025年は下回った。日本人の出生数は2024年に推計比-9.1%だった。「2050年に何万人」という数字を見るときは、どの仮定の下の値かを確かめたい。

全国の人口の指標は人口カルテ47の全国のページで見られる。ツールの紹介は人口カルテ47にある。

参照: 推計は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(2023-04-26 公表) https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp (結果の概要 https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_gaiyou.pdf と統計表の表3-1・表4-1・表4-2・表4-4・条件付推計表3・日本人参考推計表2)、「同(平成29年推計)」(2017-04-10 公表) https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp の表1-1、「同(平成24年1月推計)」 https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/gh2401.asp (報告書 https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/gh2401.pdf の表1-1)による。実績の総人口は総務省統計局の国勢調査(令和2年 e-Stat 統計表 0004019309、令和7年 0004066183、2026-09-29 公表の確定値)、出生数は厚生労働省「人口動態統計」(e-Stat 統計表 0003411603、日本における日本人の出生数)による。確認日はいずれも 2026-10-20。推計の値はいずれも出生・死亡・移動の仮定に基づく計算である。幅・差・比・1億人を割る年は本稿の集計。集計・確認日 2026-10-20。本稿の数値と図は、上記の推計と統計(政府統計の総合窓口 e-Stat で公開)を基に doand.tech が加工して作成したもので、国や国立社会保障・人口問題研究所が作成したものではない。